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メール・マガジン
「FNサービス 問題解決おたすけマン」
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★第124号 ’02−02−08★
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トレード・シークレット
(1)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
●大企業と言えども
決して安泰でない、まして倫理的でもないこと歴然の事態続発で、今や
<会社国家日本>全体が揺らいで来ました、、 と煽り立てるマスコミ
ですが、みんな浮き足だった感じになってはまずい、
と思ったか今度は、この不況の中でもちゃんと稼いでいるという小企業
を紹介する番組や記事をちらつかせる。 何といい気なマッチ・ポンプ。
しかし、その種ささやかな話題にしか喜びを感じられないくらい、
我々は希望に飢えているのでしょう。 何と悲しい国、ですねえ。
ムネオやノナカの<永田村>的笑顔に、こちらはさらに暗くなる。
政治家や官僚の認識、業界ぐるみの利権構造などがそのままなら、
片隅でまともな努力を積んでも、日本が良くなるわけ無かろうに。
先夜、関口宏<ほんパラ!痛快ゼミ>が取り上げたメトロポリタン出版、
「不可能を可能にした男 岡野雅行」もその一つ。 この主人公、講演
に引っ張り出されたり、ネットにも掲げられたりしてますが、
少々伝法な口の利き方が魅力だそうで、今が旬。 尤も<伝法>本来の
語義は<仏の教えを伝えること>。 この主人公のは<現場教>とでも。
取りあえず承りましょう、何にでもヒントは潜んでいるのだから。
*
墨田区は向島、工場の脇に自宅、いや自宅脇の工場? 通勤時間10秒
という職住近接。 たださえ広くないところに機械ギッシリ。 従業員
6人で年商6億とはオドロキ、よほど特殊な金型だから、なのでしょう。
サーモスタット屋は東京と山形の2工場計80人で3億円。 それでも
世間より2割高い給料が払えた(社長分はソコソコでしたが)ことから
すると、、 うーん1人1億、すごくリッチなんだろうなあ。
新聞は「百分の一ミリの世界、」と書くが、その横に百分の五ミリしか
測れない<ノギス>をオス型に当てている岡野氏の写真。 四半世紀前、
すでにそのレベルを<精密>とは言いませんでしたがね、、
東京ではバイク通勤10分、山形では工場住み込み。 事実上全人生を
サーモスタットに捧げていた私には(依頼も無かったが)、講演に出る
時間があることすら不思議です。 どんなシークレットがあるのやら?
* *
岡野氏の得意分野は<深絞り>、平らな金属板を型に押し込んで箱や筒
の形にする仕事。 間口の狭い、その割に長い(深い)容器、と言えば
口紅や万年筆。 つまり昔から身近に色々あって珍しい技術ではないが、
「ケータイ用リチウムイオン電池の角形ケースをステンレス鋼板で」と
なると、材質、形状、寸度、精度、あらゆる点から容易でない、らしい。
それを成功させたのだから偉いが、シークレットは潤滑油にもあった、、
と聞いて思い出しましたよ。 サーモスタット屋時代には金型から部品、
組み立てまでの一貫自社生産。 内製率メノコ95%!を誇りましたが、
磁石、セラミック部品、それにもう1点だけ外部に依存しておりました。
その<1点>が、<深絞り>の円筒鋼板ケース。
尤も、難しいからではなく、サイズが我が社の機械に合わなかったから。
特定先向け限定個数のために敢えて設備することはすべきでない。 で、
発注先候補を何社も訪ねて研究し(最終、トヨタにバンパーなどを供給
していた大会社、F工業に決め)ました。
しかし、容易には<研究>させてもらえない要素もあって、その一つが
<潤滑剤>。 メス型にオス型で鋼板を押し込んで行く際、それぞれの
間に大きな摩擦が生じます。 滑らせてやらないと、金型が摩耗したり
製品に傷が付いたりする、、 だから、
<潤滑剤>を流すのですが、これが全く経験とカンの領域。 生産段階
で<何>を使うかは<お任せ>するほか無い。 油脂でない場合もある。
たとえばテープ・レコーダー<ヘッド>ケースの絞りでは当時世界一の
K製作所(も候補でした)で聞いたシークレットは、何と<石鹸水>。
それが、何石鹸でも良い、ではない。 <玉の肌石鹸>、売価100円。
同じ<玉の肌>でも100円のに限る、というのだからほとんど笑い話。
岡野社長も<独自製法による潤滑油>使用で電池ケースの深絞りを可能
にしたそうですが、<製油>設備らしきものは映し出されなかったので、
<キリシタン・バテレンの秘法>レベルだろう、と想像します。
「深絞り4年間の挑戦」の大半は、色々な<調合>でのテストだったに
違いない。 教えてはくれまいが、聞けば聞き腹、知らぬが仏。 効果
が得られさえすれば宜しい、それが企業シークレット。
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●さて、その番組途中の
クイズ。 「普通ならあって、岡野さんの工場の中に無いもの。 次の
四つのうち、どれでしょう?」 トイレ、エアコン、コンピュータ、、
もう一つは、エーと、、 何だっけ? それはともかく、
トイレは欲求5段階の最底辺、無いわけに行かんじゃろ? 精密金型の
工作に温度管理は欠かせない、エアコンは必備。 まあ、叩き上げの男、
<カン>ピュータだろう。 じゃ、無いのはコンピュータ? ブー!
正解はトイレ。 工場の<外>に設けられ、<中>には無い。 なぜ?
「トイレ使わせて下さい」で入って来られてはシークレットが保てない
から。 え? TV取材カメラは入れたのに、、 オカシイな。
*
サーモスタット屋はもっとキビシクしてました。 発注に先だって現場
を見ておきたい、と日本の顧客は必ず言う。 それを、「お買い上げに
なるのが<会社>なら、喜んでご案内します。 でも、<製品>でしょ。
それはもう散々お調べになった後、、」 作るところを見なきゃ心配?
だったら買うな、の構え。 だが、トイレは同じ天井の下、応接室の隣。
<現場立ち入り無用>は岡野氏と同じでした。 何故なら、
サーモ屋にパテント無し。 すべては<公知の事実>の集積。 それら
の組み合わせと使い方こそがシークレット。 即ち、ノウ・ハウの世界。
原理を記述しなくちゃ特許は申請できない。 申請すれば手順通り公開
され、あたら秘伝が洩れるだけ。 得るよりも失なうものの方が大きい。
そうでなくともシークレットの洩れやすさ、自分の<盗んだ>体験から
も、油断は許されない、と肝に銘じておりました。 <眼力>ある人は
どこにでもいますから、ね。 危うきは近寄らせず、、
* *
(第60号から66号にかけて書いた)オハイオのT社を初めて訪ねた
時は未だサーモ屋になる前でしたが、ある重要な部品の加工で、長らく
抱えていた疑問がありました。 均一に加工しても、性能が不安定、、
その訪問は双方の将来を語り合うためでしたが、サーモを知らないので、
と見学を希望すると、快く案内してくれました。 が、彼らも用心深く、
肝心部品の作業場は「空調してるから、」と廊下からガラス越し、
立ち止まることも許されず歩き過ぎながら、でしたが、ヒドイ乱視の今
と違って、当時はE−100RS並みのAFスーパー・テレ・モード。
視力は数メートル彼方、プレス機の懐まで届き、我々の金型では曲面に
していた箇所が、あ、<すり鉢>! 僅か10ミリの反射光キラリ!で
見て取れたのです。 が、何食わぬ顔、「良い工場ですね、、」とか、、
で、帰国するやそれに没頭。 たちまち「何でも来い!」に。 すると、
それを応用するのにピッタリな話が家電メーカーS社から来たんですな。
S社も同様の部品を自社製作していたのですが、「歩留まりが悪すぎて、
担当者が次々ノイローゼ、、」。 では「おたすけ」しましょう、、
もちろん感謝されたが、テキもさるもの、現場の者。 どうやるんだ?
と知りたがる。 ご冗談、何で教えるものか、せっかくのシークレット。
<あるある大事典#267>は、経験の記憶が<判断基準>になる、と
色々な実験で解説していました。 判断基準が鮮明な人ほど選択が迅速
的確、即ち<カンの鋭い人>。 だが、記憶だけではダメ。
記憶と現実の<かすかな違い>が感じ取れるかどうか、が大切。 それ
を司るのが扁桃体。 <快>が伴うと海馬の回路形成がより明確になる。
つまり、興味や感動に満ちた人ほどカンが働きやすい、、
T社での私はまさにそのものだった、わけ。 だから現場経験ある人は
現場に入れるべきでない、という方針を貫きました。 岡野氏の来客は
あまり現場人らしくは見えなかったが、、 でも、シークレット!
* * *
あのキラリ!からもう40年近く経つのに、<岡野社長>で火がついた
現場談義、こうなると1回では収まらない。 ご迷惑を顧みず、次回に
to be continued 、ご承知おき下さい。
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●三題噺にすること、が
このメルマガの基本方針です。 もうお分かりでしょう、<あるある>
の解説は
Rational Process の効用そのものだったではありませんか?
あなたのお仕事が岡野氏やサーモ屋のような<製造>ではないとしても、
カンが要らないわけが無い。 もし能力や努力が同等なら、カンの働き
の良い人が勝ちます。 何たって思考スピードの時代、ですからな。
それには<明確な判断基準>の形成が必要だが、あいにく<過去の延長
線上>には無いことばかり発生する当節、判断基準を経験から生み出す
わけには行かない。 が、DAやPPAで補えば、かなり実際的になる。
ワーク・シートを用いて議論すれば<楽>だし<楽しい>。 扁桃体が
喜び、海馬が活性化され、あなたの<ビジネス・カン覚>は高まります。
即ち、
Rational Process は<ビジネス・カン覚>強化のツール!
■竹島元一■
■今週の
<私の写真集から>は、 ★興味と感動 (1)★
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